東京で仕事をして、横浜に住んでた自分は、何一つ無くしたわけではない。
子ども達の無事を確認できた時点で、被災から免れたのだ。
それでも、2011年3月11日は自分が生きている限り記憶の中に刻み込まれる。
人生の、残り時間のカウントダウンが始まった日。
思考が猛スピードで動き出し、一気に決断へと向かった日。
背中を押されてしまった。自然の脅威に。
そしていま、自然のまっただ中で、天地の采配に文句を言えない仕事をしている。
勝てないことはわけっているけど、負けたくない気持ちも強い。
若い頃から何をやっても人より劣っているのが常だったけど、もしかしたら両親からいただいた能力は「負けず嫌い」という気質かもしれない?ちょっとやそっとじゃ、諦めないのだ。
農作業も徐々に忙しくなる。
自然には絶対勝てない。でも負けたくない。だから共存しなきゃ。自然の声を聞かなきゃ。
8年目の3月11日。良きワインのために、今年も葡萄づくりに最善を尽くす。
新しいシーズンが始まっている。