伊那路

先日、委託醸造をお願いしているワイナリーVinVieさんへ使用済みのコンテナを引き取りに行ってきた。

上田市からは片道2〜3時間もかかるためちょっとした旅気分でもある。とはいえ、これがまたいいのだ。さすがに年相応に長時間ドライブは厳しくなったが、それでもクルマで出掛けるのはいくつになっても楽しみのひとつなので、遠路とはいえ用事ができると喜んで行ってしまう。

もうひとつ、いまは発酵途中なのでマスト(もろみ)の状態が見られることも楽しみだった。よしよし。すくすく育っている我が子を見ている気分。

今回は500Lの発酵タンク。もっと大きいのが“必要になる”ぐらい収量だったらなぁ。

ぴかぴかの新品です。

昨日はVinVieさんから画像を送っていただいた。白ワインの果帽(もろみの上に浮かぶ果肉や果皮、種のかたまり)です。孫(?)の写真が送られてきたような気分。

写真提供:VinVie・S氏

良い気分で帰路に。帰りは高速道路を使わずのんびり伊那路をドライブ。あいにくの天候だったものの、国道と並行に伸びる山沿いの道は素晴らしい車窓が続く。特に今の時期は、稲刈り間近の田んぼの黄色と蕎麦の花の白が幾重にも広がる景観が実に気持ちいい。

これは15日に撮影したもの。

上田と伊那の間にある諏訪湖沿いの岡谷市、ここにお気に入りの小さな美術館がある。「イルフ童画館」。帰り道に立ち寄るのにちょうど良い。

大正末期から亡くなる昭和五十年代まで童画家として活躍した岡谷市出身のアーティスト・武井武雄の美術館だ。

芸術関係に詳しい人はともかく、一般的にはほぼ無名なのではないか?

長野県に来た当初、可能な限りあちこちの美術館に出掛けたけど、そのとき「発見」したひとりだ。まったく知らなかった。

とにかくアイデアが凄い。無尽蔵。色づかい、構図、デッサン力、そのどれもが極めて個性的で完成度が高い。

童画家と称しているが、私個人としては「グラフィックデザイナー」と呼びたい。全く個人的な意見だが、トミ・ウンゲラー、ミルトン・グレイサーと並ぶ三大巨匠だ。

長くなるのでこの辺でやめておく。武井武雄。また観に行こう。

充実の伊那路でした。

まずは白ワイン品種から

いつも通りの言い訳だけど、バタバタしていたらまたしてもブログ投稿が1ヶ月ぶりとなってしまった。

次回メルロの収穫に向けてすぐに作業を始めるけど、とりあえず白ワイン品種の収穫が終わったので、緊張感を保ちつつも少しだけ精神面で開放感が生まれた(身体は悲鳴をあげている)。

今回は知人に教えて貰った冷蔵倉庫を借りることで、これまで必死に1日で終わらせていた収穫を、2回に分けて行うことが出来た。

最初は自宅前の殿城ヴィンヤード。ソーヴィニヨン・ブランと若木のシャルドネ。数は少ないし、ここは病気が少ないのでひとりでこつこつ行った。

14日(月)が本番。真田ヴィンヤードのシャルドネとリースリング。10名もお手伝いに来ていただきました。皆様に改めて感謝。

S氏撮影。画像をご提供いただきました。ありがとう。

昨年比32%減。手元で計った限りでは総収量423kgでした。

昨日15日は委託醸造先のVinVieさんへ持ち込み。前回までとワイナリーは変わりますが、醸造家は同じ竹村氏。これまでの流れもしっかり把握しているし、まだ経験不足の私の意見も真摯に聞いてくれるので、100%安心できるパートナーです。

さっそく仕込んでくれた。

写真提供:VinVie

もちろん今回も混醸。シャルドネ74.9%、リースリング12.7%、ソーヴィニヨン・ブラン12.6%となった。

そして醸し発酵をします。

今回は意図的に早く摘みました。

白ワインはやはり酸が欲しい。そしてこの1週間の酸落ちが速かった。pHもどんどん高くなっていた。

加えて、晩腐病が出始めて、その広がりも早まっていた。

選果でどんどん収量が減る中での糖度の上昇を待つリスクにびびる。

病原菌の混入割合が大きくなることによるもろみへの影響が怖い。

まだ知識不足ながらも少しは繊細な判断をできるようになってきたため、かえって臆病になっている。

実際に収穫をしていると、熟しきれていない実も多かった。そのため、仕込み時の糖度はかなり低いので補糖を行う。

ただ、最近は収穫時にいちばん重視しているpHが思っていた以上に低かったため、亜硫酸を減らすことができるとの報告をいただいた。

7月の致命的な長雨で、今年は有機農薬のみでの栽培が不可能となったが、亜硫酸を少なくできることは朗報であり、早摘みをしたのは正解だったと思われる。

白の2020年はこれまでと少し異なる個性となるだろう。この先も試行錯誤は続くが、今年は栽培家としてもターニングポイントとなるかもしれない。

会話

今日・明日と防除作業の予定で、まず今朝は真田ヴィンヤードの防除を終えた。

4:30起床で真田に向かい、5時過ぎにスタート。なるべく涼しいうち、できれば6時台に終わらせたかったけど中々思うようにはいかなかったが、太陽が強くなってくる前の7時過ぎにどうにか完了。終わってから後片付けや掃除、洗濯をしているとあっという間に時間が過ぎ、8:30ごろにようやく朝食にありつく。もう今日は休養とする。明朝は殿城ヴィンヤードの防除作業もあるし。

一昨日の日曜日。友人が手伝いに来てくれた。

実ベトの病害で惨憺たる状況のメルロ。8月にはいってからずっとこの病果とりを続けているのだが、見かねた友人がボランティアをかって出てくれたのだ。

コロナ禍以降、自粛が常態となっている世の中だが「自分にはさほど影響が無いだろう」と思っていた。

子どもの頃から黙々と細かい作業をするのは好きなので、今回も「どうせ何処にも遊びにいけないから農作業をやっていればいい」と鷹揚に構えていた。

ところが、この病果とりを延々と続けていると、どうしても鬱々としてしまう。天候のせいにしたところで何にもならない。黒い病果のかたまりを前に下を向く日が多くなり「自分の判断ミスもあったかな」とか、余計な考えがぐるぐる巡っていたり。

考えてみると、去年までは疲労がたまったりすると、ふいにドライブに出掛けたり、美術館に行ったり、温泉に行ったり、ワイナリーに行って誰かと話しをしたり、知人に会いに出掛けたり、と、気まぐれながら定期的にリフレッシュしていた。

結局、知らず知らずのうちに人に会いに行っていたんだろうな。

一昨日は病果とりの作業をしながら友人と会話をする、というシチュエーションにとても癒された。いつもより疲れにくいのだ。心が軽くなってくるのが実感できた。

元々あまり自分から多くの話しをするタイプではないのだが、自然と饒舌になっている自分に気づきおかしくなった。

会話って、大切なんだね。

一人でいるのは好きだけど、独りでは生きていけないようだ、人間は。

今さらながら気づかされた。

60年以上生きていても、まだ知らない自分に出会えた。

酷暑。

ここ3年ぐらい、真夏はこんなタイトルばかりのような気がする。

昨日の夕方。見ているだけで暑そう。

今日も上田市の最高気温は37℃予想。厳しいです。8月1日から連続15日。つまり毎日。10日なんて37.3℃だったし、11日は37.6℃。もう狂っている。

今朝7:00頃。これまた暑そうな写真。

今朝は7時頃から3時間ほど作業していたけど、10時にはもうキツかった。

3〜4年前までは午後3時過ぎると涼しくなることが多かったけど、このところは夕方でも暑い。気をつけねば。

前回の記事は7月の長雨を愚痴って、今回は酷暑への愚痴だ。

いつも家と畑とスーパーだけをいったりきたり。買い物時だけ気をつければ、ほぼ密は無い。とはいえ、さすがに飽きてきたなぁ。

身体的な疲れ以上に精神的にも厳しくなってきたか。リフレッシュしたいな。でも作業はいっぱいあるので、9〜10月の収穫までほぼ休めないだろう。まぁ、休んでいても心配な気持ちが抜けないだろうが。

どうしたらリフレッシュできるかな?

せめて、涼しくなってくれないかな?

黙々と。

結局、6月30日から始まった降雨は7月31日まで続いた。この間、24時間降らなかったのは7月19日・20日・22日・29日の4日間だけだ。

最も痛かったのは、23日から27日まで終日降り続けた雨で畑が田んぼのようになり、まったく防除ができなかったこと。最悪のタイミングだ。「Go Toトラベルの祟りだ」と、怒りの矛先を人災のような施策に向けざるを得ない精神状態に陥った。

かつて無いほどのベト病に襲われた。肥大期の実が乾く間もないほどの雨続きのため、「実ベト」が多発。

これまでこの病害が少なかったウチの圃場も、今回ばかりは逃れることはできなかった。

メルロはとくにベト病に罹患しやすいという。

いまのところの見立てで、今季の収量は1/3程度となるのではないか?白品種も4割ぐらの減収は覚悟する必要がある。この先もまだ病害、虫害が待っているし。

力が湧かない。気力が出てこない。気持ちが萎えかかっている。でも、精神的に動揺すること自体が、まだ素人なのかもしれない。

昨日の上田市の最高気温は35℃。厳しい暑さだ。大量にある病果を除去する作業を始めた。果てのない気分だが、立ち止まっているわけにもいかない。

黙々と歩むのだ。

プッシュ母体の変化

はっきりと記憶にあるわけでは無いが、もう15年ぐらい前だったろうか?

40代も半ばを過ぎた頃で、だんだん広告業界がイヤになってきていた。

当時、ネット広告が存在感を増し始めてきたころで、広告やマーケティングの中でよく「プル型」「プッシュ型」という表現が専門メディアで取り上げられることが多かった。

制作側である自分の仕事は、受け手側に「感じてもらう」キャッチコピーやビジュアル、あるはデザインで仕掛けるわけで、主導権はあくまで読者や視聴者など広告を見る側にあった。これがプル型。

プッシュ型はその反対。

見たくもない、興味も無いのに、どんどん広告が追いかけてくる。

チラチラした目障りな動きが、無防備にマウスを持つ手やタッチパネルの指を誘う。

バナー広告には「デザイン性」は必要無い。いや、必要なんだけど、それは自分がこだわってきたデザインというものではなく、「目障りな仕掛け」なのだ。

袋文字、影文字、過剰な装飾を求められ、派手な色づかい、キラキラした発色、煽りの言葉。

イヤだったな。

だが、時代はネット広告全盛となる。紙媒体の仕事が減る一方、イヤイヤ始めた小さなネット広告の仕事がコンスタントに入ってくるようになる。皮肉にも、リーマンショック後は危機に陥っていた会社に欠かせない仕事になっていった。

その後は、通信及び機器の大容量化と比例し、ビジュアルもどんどん表現領域が広がり、今では若いクリエイター達が次々と登場し素晴らしいクリエイティブを生みだすようになってきたが、広告表現の「過剰性」「装飾性」「煽り」は定着してしまった。主だった関係者を説き伏せられる結果(数字)を出せるのだろう。

いまでは、ムーブメントは「作れる」ものだと思うようになった。大量にプッシュすればいい。人目を惹く強烈なインパクを提示できればいい。

共生、共感という言葉がよく使われる。でもそれは、人為的に作られるケースが多い。(故に、民衆レベルから自然発生したムーブメントは魅力的だ)

あろうことか今、国家レベルでムーブメントを作ろうとしている。プッシュプッシュだ。

キャンペーンはセンスがなければ成功しない。

Go Toって。

いやがらせか!?

ストレス発散の投稿である。

あまりストレスはたまらないほうだ。もちろん、時にはあるが、割と切り替えが早いほうだと自分では思っている。

が、も〜〜う!腹が立つ。

朝から降り続く雨が、お昼過ぎに弱まったと思ったら、すぐに止んだ。

空は明るい。遠くの山々もくっきりしてきた。

Yahoo!天気は、午前中までの予報では夜半まで雨だったが、いつの間にか晴れマークに変わっている。明日は最初から晴れ間が出る予報だった。

雨が止むと思うよ、誰でも。

実は、一昨日も、昨日も、終日雨予報だったが、朝に降った後は小康状態が続きやがて曇り空が続く。それでも雲行きは怪しいから、草刈りをしながら様子見をしていた。「強行は裏目にでるかも?」と。周囲のリンゴ畑では防除作業をしているが、、、

結局、前日までの2日間は、やろうと思えばできた。

で、今日だ。前述のように終日雨予報。

1時半過ぎ、晴れ間が出てきた。

決行!

とりあえず順調、と思ったら、2時半、急激に雲行きが怪しくなってきた。

3時。どしゃぶり。

あ〜〜〜〜〜〜。

労力もボルドー液も無駄になった。。。

3時20分。大雨警報。続いて土砂災害の警戒レベル3だって。トホホッ。

いま現在、空が明るくなってきた。

たぶん、この後雨は止む。

そう思うと、余計に腹が立つ。

こういうときに、話し相手が必要なんだな。愚痴を聞いてくれる。

ブログで我慢しよう。

すべて停滞

雨、雨、雨。もはや思考停止状態。

絶え間ない雨天は、畑作業の大幅な遅れを強要する。

降水帯も作業も停滞中。

有機農薬とはいえ防除の回数は出来る限り減らしたい。でも梅雨時はそうもいかない。病害のリスクはどんどん増大する。

不安が募る。

畑や作物が流されないのでいい。

暮らしや健康、身体に被害がなければいい。

生きて過ごせればいい。

まだ、そういう心持ちになれるほどの余裕がない。

ベテラン農家の境地にはまだほど遠い。

和定食の魅力

飲食店ではめったに写真を撮らないのだが、昨日の昼食で食べたイカ刺し定食が実に魅力的だったのでつい撮ってしまった。

お気に入りのお店(こじんまりした家族経営なので名前と場所は載せない)。

チェーン店はともかく、山国の地方都市では美味しいお魚定食を食べられるお店は少ない。しかも季節毎の素材、旬の魚となると尚更だ。

基本は昔から肉好き。特に農繁期はしっかりスタミナ補給しないと体力的に持たない。とはいえ、ときおり無性に魚料理が恋しくなる。

そういうときに、比較的近くにこんなお店があるなんて幸運!

そしてこのお店のもう一つの魅力が、ひとつひとつ丁寧に味付けされた手作りの小鉢。常に4品ある。味噌汁は豚肉も入った具だくさん。デザートだって小鉢で出てくる。

それでいて、上の写真のイカ刺し定食はなんと850円!

日本酒が飲みたくなってしまった。

近くとはいっても、ここ岩清水からは山を降りなければいけない。

歩ける距離にあったら夜も行ってしまう。

歩けなくはないかな?

行きのくだりは40〜45分。帰りの上りは1時間ほどとみた。

おととい熊の目撃情報が村の連絡でまわってきた。

やっぱり無理だ。

白ワイン、シードルの絵。

ときどき聞かれるので、今月上旬に発売した、真田殿城ブラン2019と真田シードル2019のエチケット(ラベル)の絵について。

左:真田殿城ブラン2019、右:真田シードル2019

真田殿城ブラン2019の絵のタイトルは「感情交差点」。2017年に、軽井沢のギャラリーでのグループ展に誘われたときに描いたもの。

アクリル、ガッシュ/227×158mm/カンヴァス

予め「軽井沢をテーマに」というリクエストがあったので、旧軽井沢の「六本辻」という交差点がありそこをモチーフに描いた。

ここは「ラウンドアバウト」と呼ばれる方式のヨーロッパでよくみかける環状になった交差点で、雰囲気が好き。

ラウンドアバウトには信号が無く、様々な人々が、各々の判断で行き交う。その判断は個々に委ねられ、安全もリスクも自分で決める。

誰かに強制されないし、何かに制御されてもいない。

自由がある。

人々の交流もそうあって欲しい。

各々の感情もそうあって欲しい。

真田シードル2019の絵は単純明快。リンゴの花です。

アクリル/333×242mm/カンヴァス/2020年5月制作

4月下旬から5月上旬にかけ、信州のあちこちの畑でリンゴの花が満開になる。

ちょうど「シードルのラベルデザインはどうしようかなぁ」と思案していた頃、ふいにお隣のリンゴ畑が目にはいり、「これでいいじゃん!」と素直に、そして一気に描いたもの。

迷わず、勢いで描いたのが功を奏したか、植物が持つ開花期のエネルギーや、この季節の澄んだ空気感を出せたと思う。