線路は続くよ、どこまでも

毎年同じようなことを綴っているのかな。それでもこの日を迎えると、何かしら書き残しておかなければならない衝動に駆られる。

東日本大震災から10年。

当時、被災地に、被災者へ、何かができたわけじゃない。むしろ、何一つできなかった。「何もしなかった言い訳」が許されるなら、自分のことで精一杯だった。

人生でいちばん辛くてもがき続けていた頃。そんな小さな人間の営みを「吹っ飛ばす」ほどの衝撃。

残された時間は短い。

前しか向かなくなった。

2012年1月、気仙沼市。海縁で寸断された線路。

きっと、再び、人々は必ずつないでいく。そんなことを思い、願った。

「持続鉄道」アクリル・パステル/F30号/カンヴァス/2020年制作

絵音

カッタン、っていう感じ。

昨夕、来年7月に東京で開催される展覧会へのお誘いがあった。その時の心の音。

昨日は雨予報でもあり、疲労回復のためにも一日中家に閉じこもっていた。そして、ずっとスランプ気味だった創作のエンジンをどうにかして回転させようともがいてもいた。例年なら、収穫が終わると自然と頭と気持ちはアート方面に向くのが、今年はどうも上手くいかないのだ。

ひとつは、コロナ禍で個展を中止にした影響だろう。ちょうど明後日23日(月)から28日(土)まで銀座のギャラリーQで開催する予定だったので、本来なら今ごろはピリピリしていたはずだ。

もうひとつは、ぶどう栽培のことが頭から離れない。すでに来シーズン以降に向けた思考が駆け巡っている。

ともあれ、スイッチは入った。描きたいことはいっぱいある。まずは筆を動かそう。血が騒ぎ出してきた。アートの血が流れる音だ。

伊那路

先日、委託醸造をお願いしているワイナリーVinVieさんへ使用済みのコンテナを引き取りに行ってきた。

上田市からは片道2〜3時間もかかるためちょっとした旅気分でもある。とはいえ、これがまたいいのだ。さすがに年相応に長時間ドライブは厳しくなったが、それでもクルマで出掛けるのはいくつになっても楽しみのひとつなので、遠路とはいえ用事ができると喜んで行ってしまう。

もうひとつ、いまは発酵途中なのでマスト(もろみ)の状態が見られることも楽しみだった。よしよし。すくすく育っている我が子を見ている気分。

今回は500Lの発酵タンク。もっと大きいのが“必要になる”ぐらい収量だったらなぁ。

ぴかぴかの新品です。

昨日はVinVieさんから画像を送っていただいた。白ワインの果帽(もろみの上に浮かぶ果肉や果皮、種のかたまり)です。孫(?)の写真が送られてきたような気分。

写真提供:VinVie・S氏

良い気分で帰路に。帰りは高速道路を使わずのんびり伊那路をドライブ。あいにくの天候だったものの、国道と並行に伸びる山沿いの道は素晴らしい車窓が続く。特に今の時期は、稲刈り間近の田んぼの黄色と蕎麦の花の白が幾重にも広がる景観が実に気持ちいい。

これは15日に撮影したもの。

上田と伊那の間にある諏訪湖沿いの岡谷市、ここにお気に入りの小さな美術館がある。「イルフ童画館」。帰り道に立ち寄るのにちょうど良い。

大正末期から亡くなる昭和五十年代まで童画家として活躍した岡谷市出身のアーティスト・武井武雄の美術館だ。

芸術関係に詳しい人はともかく、一般的にはほぼ無名なのではないか?

長野県に来た当初、可能な限りあちこちの美術館に出掛けたけど、そのとき「発見」したひとりだ。まったく知らなかった。

とにかくアイデアが凄い。無尽蔵。色づかい、構図、デッサン力、そのどれもが極めて個性的で完成度が高い。

童画家と称しているが、私個人としては「グラフィックデザイナー」と呼びたい。全く個人的な意見だが、トミ・ウンゲラー、ミルトン・グレイサーと並ぶ三大巨匠だ。

長くなるのでこの辺でやめておく。武井武雄。また観に行こう。

充実の伊那路でした。

白ワイン、シードルの絵。

ときどき聞かれるので、今月上旬に発売した、真田殿城ブラン2019と真田シードル2019のエチケット(ラベル)の絵について。

左:真田殿城ブラン2019、右:真田シードル2019

真田殿城ブラン2019の絵のタイトルは「感情交差点」。2017年に、軽井沢のギャラリーでのグループ展に誘われたときに描いたもの。

アクリル、ガッシュ/227×158mm/カンヴァス

予め「軽井沢をテーマに」というリクエストがあったので、旧軽井沢の「六本辻」という交差点がありそこをモチーフに描いた。

ここは「ラウンドアバウト」と呼ばれる方式のヨーロッパでよくみかける環状になった交差点で、雰囲気が好き。

ラウンドアバウトには信号が無く、様々な人々が、各々の判断で行き交う。その判断は個々に委ねられ、安全もリスクも自分で決める。

誰かに強制されないし、何かに制御されてもいない。

自由がある。

人々の交流もそうあって欲しい。

各々の感情もそうあって欲しい。

真田シードル2019の絵は単純明快。リンゴの花です。

アクリル/333×242mm/カンヴァス/2020年5月制作

4月下旬から5月上旬にかけ、信州のあちこちの畑でリンゴの花が満開になる。

ちょうど「シードルのラベルデザインはどうしようかなぁ」と思案していた頃、ふいにお隣のリンゴ畑が目にはいり、「これでいいじゃん!」と素直に、そして一気に描いたもの。

迷わず、勢いで描いたのが功を奏したか、植物が持つ開花期のエネルギーや、この季節の澄んだ空気感を出せたと思う。

色々動き回って

また告知を忘れていました。

1月4日から始まっていた。「佐久平の美術展」が長野県の佐久市立近代美術館で26日(日)まで開催中です。80号を1つ出品。他の入選作とは明らかに異風なので、よくぞ通ったなぁという印象。お近くにお出かけの機会がありましたらお立ち寄りください。

中央のマンガみたいなのです。

* * *

金曜日から昨日まで、神奈川と東京をウロウロしていました。

なにはともあれ、恒例の寒川神社へお詣り。長年の習慣というのは恐ろしいもので、ここに詣でていないとどうにも落ち着かない。

お札もしっかり揃えました。2020年のおみくじは小吉です。

土曜日は代官山でひとつ用事を済ませ上野へ向かう。

まずは1つ出しているギャラリー主催の展覧会へ。始めての参加だけど、ここは「業者間取引のため」という印象。ギャラリーというより商談用のスペースなのかな?と。一応どなたでも入れるけど一般の方は入りにくいかも。プロモーションに力を入れている様子でギャラリスト集団を目指しているのかも?

10号を1点出しています。

午後からは上野公園内の「東京国立博物館」へ。「人、神、自然」という大仰なタイトルの展覧。世界各地の古代工芸が中心だが、カタール王族によるコレクションには驚いた。金に糸目を付けずに蒐集できるコレクターは世界中にたくさんいると思うけど、この殿下のセンスには脱帽だ。「俺の好み」でした。古代美術、掘り下げる意味あるかも。(写真撮影は禁止でした)

夜はお楽しみの時間です。5名で旧交を温める宴。神田のワインバーでリラックスタイム。

日本のクラフトビールは苦手。このベルギービール、好きな味でした。
ジビエ、いいですね。堪能しました。(写真提供:O氏)
白も赤も、ワインはいいねぇ。(写真提供:O氏)

日曜日。東京へ来る機会も徐々に減ってきたので、思い立ったが吉日と「東京都現代美術館」へ。

オノサト・トシノブ、いいです。初めて知った岡本信治郎、感動しました。(撮影不可)

東京の美術館ではここが一番好き。半日では時間が足りない。

慌ただしく動き回って、あっという間の3日間でした。さて今日から日常の始まりです。

不出来ながら我が人生。

機会をいただき、陶芸のワークショップに参加している。昨日は2回目で、3週間前に成形し焼き上がったものに絵付けをする段階。

初回に陶芸家の先生が「型にはまらず自由に楽しんでいいですよ」という言葉を真に受け、というか、拡大解釈し、自由にやらせてもらっている。

ワークショップの作品テーマは「自分だけのワインクーラー」なので、素直にそれを造っているのだが、成形しているウチに勝手にイメージが膨らんできてしまい、どんどん逸脱してくる。

どうやら自由すぎたようだ。お手上げのようである。

私の絵付けの状況を見ながら、先生曰く「こういう方は好きにやってもらった方がいいね」と、半ばあきれていた。ところが、他の参加者も中々の強者揃いで「自由すぎる人々」が多く、こんな時は指導役の先生も大変だ。

という訳で、絵付けまでは終えた。仕上がりがどうなるのか初心者には想像すらできない。

まぁいいさ。出来不出来を気にしていたら、ちっとも面白くない。

不器用な人間の人生みたいだ。そんな作品になれば本望かな?

さてどうなることやら。完成は2週間後。

個で、小さく、弱い。

昨日で個展2日目を終えた。

やっぱりいいな、個展。

大きな美術団体も、そこでしか体験できないこと、得られないことはあるけど、もういいや。芸術家の団体とはいっても結局は人間の集まりだもの、どんなに秀の人でも組織で物事を動かすとなると衆の思考が必要となる。階層の力が生まれる。

我が儘な人間には無理だな。ちょっとでも自由が狭まると途端に窮屈さを感じてしまう。

一人がいいや。

大きな枠はいらない。小さくていい。

強くなくていい。弱いままでいい。

気の合う、感覚の合う、人の価値観に土足で上がり込まない。そんな人たちと、ちゃんと交流できる距離を保てれば十分だ。

さて、今日も頑張ろう。自分のペースで。

心の花美術館

11月になりました。重ねてとなりますが、改めて個展の告知を。

11月7日(木)〜11日(月)、個展を開催します。会場は上田駅から徒歩7〜8分ぐらいにある「心の花美術館」。

上田市に移住して7年目。特に意識はしていなかったけど「そういえば初めてだなぁ、地元でやるのって」という感じ。

1年毎に東京と信州で交互にやろうと何となく決めているけど、ようやくここで行えることになってちょっと嬉しい。

個展の会場は、だいたい1年以上前から物色しておかないと、希望する会場で希望するスケジュールを押さえられないことが多い。

最初は上田市立美術館の市民ギャラリーがどうかと思っていたけど、広すぎるので「違うなぁ」と。冷たい感じがした。また公の施設なので手続きをはじめとした縛りがあり少し躊躇してしまった。

で、以前から「ここ、いいなぁ」と思っていたのがこの美術館。

個人で運営している小さな美術館で、街中の目立たない一画にあり、よく見ていないとウッカリ通り過ぎてしまうような佇まいだ。展示スペースも限られた空間ながらほどよい距離感を保てて見やすい。けっこう好きだ、このサイズ感。

今回は「なんだコレ?」という絵が多いかもしれない。

個人的には、具象とか抽象とか、分かるとか分からないとかどーでもよくて、誰がどう思うと観る側の勝手だもの、といつも思っている。好きなように感じてもらえればいい。ま、無理して受け入れなくてもいいけど。

期間中は休館なしで毎日会場に居ます。10:00〜17:00(最終日は16:00迄)。駐車場は2台のみ。ご興味とお暇がありましたら気軽にお立ち寄りください。

木彫り展(告知忘れ)

このところの慌ただしさと、頭の中が葡萄のことで一杯のせいか、告知することをすっかり忘れていました。

7日(土)より、東御市の喫茶&クラフトギャラリー茶楽庵にて、上田市の伝統工芸「農民美術・クラサワ工房」の教室が主催する木彫り展が開催されています。17日(火)まで。(でも今日11日と明日12日はお店の定休日なので、実質あと5日しか無くなってしまった…)

私は木彫りの猫2点、イラストを1点、絵ハガキ9点を出品しています。お時間とご興味がありましたらお出かけください。

以前に壁画を描いたお店です。
木彫作品
店内はこんな感じ。

花火と共に新情報ゲット

昨日、真田町の観光課(ゆきむら夢工房内)に「真田三代花火大会」の協賛金を支払いに行った。

毎年ウチの畑のすぐ横が花火の打ち上げ場所となるので、役場の方が農地の使用許可の承諾を得に来る。協賛金のご案内と共に。まぁ、毎年恒例です。ほんのちょっとだけど地元に貢献。

たった5,000円だけど、広告文をお願いすると、打ち上げる際に会場でアナウンスをしてくれる。いつも「バートの真田町産ワインは宮島酒店へ」っていう感じでお願いしている。※一度も現地に行っていないので実際に聞いたことが無い。

ところで、観光課だから色々なパンフレットやフライヤーが置いてあって、そのひとつに目がとまった。

おぉ〜久しぶり!村山槐多。1年に一度は見に行っていた信濃デッサン館が閉館してしまったのでガッカリしていた。

上田に来て初めて知った。もの凄い刺激を受けた一人。ゴッホもビックリの破滅的な天才。

絶対行かなきゃ。