放浪モノにやさしい社会

若い頃からウロウロする癖があって、実家を出てからも賃貸住宅の更新毎に引っ越しをしていた。26歳で初めて自分で車を買ってからは更に拍車がかかる(実際の行動範囲はけっこう狭いのだけれど…)。休日はサッカーをやりに行くか気ままにドライブとなる。

そんなわけで、ここ数年流行の車中泊も、もう35年のベテランだ。

今年、収穫した葡萄の運搬のためハイエースに買い換えた。葡萄を雨ざらしにしたくないので1tトラックよりいい。乗用車はもう不要なので4ナンバーで。

これがまぁ、車中泊にうってつけ。かつて無いほど全身を伸ばして寝ても、さらに余裕の空間がある。全身どころか手足まで伸ばせる。工夫次第でいかようにも活用できる。今回の西紀行でも大活躍でした。

そしてなんと言っても、環境の変化。

車中泊を始めた30年以上前は、人家から離れた「その辺」の道ばたに止めたり、今は姿を消した「ドライブイン」で仮眠したりだったけど、現在は至れり尽くせりの施設が選び放題だ。

高速道路のサービスエリアは言うに及ばす、道の駅の充実ぶりも素晴らしい。程度の差はあれ、おそらく全国津々浦々までサービスはゆきとどいていると思われる。

中でもいちばん嬉しい施設は日帰り温泉だろう。景気の良かった昔は「お風呂だけ」を利用出来る施設をみつけるのは難しかったけど、今はアプリがあれば現在地から近くの温泉が直ぐに見つかるし、設備の詳細や利用料金も簡単に比べられる。

信州に通い始めた頃は、その温泉天国ぶりに嬉々としたものだけど、どうやらここ10年あまりで全国各地の日帰り温泉は大充実を遂げているようだ。

京都ではど真ん中にある「スーパー銭湯」を利用したけど、駐車場も広く、露天風呂もあったり食事処も充実して休憩スペースも広々。郊外の温泉地にある日帰り温泉と遜色なかった。それで750円。

あちこちウロつく人間には優しい社会かも?

もしいま自分が若造だったら迷わず自転車や徒歩で放浪の旅に出ていたと思う。

憧れるなぁ、山下清の人生。

投稿者: vart-jpn

ワイン用ぶどう栽培農家。ワインショップ・バート運営。画家。